これでやっと本当のオレになれる
性転換手術受ける女性 幼い頃から悩み続け…
「ついに道が開かれた」−−。12日、女性から男性への性転換手術を埼玉医大倫理委員会が承認したことに、手術を希望した患者や支援者たちは歓迎の声を上げた。幼いころから自分の体が自分のものでないという違和感に悩み、現在も女性の肉体を隠して働く不安の日々。手術承認はこうした人たちに一筋の光明を与えた。しかし、戸籍上の性別をどうするのかなど、未解決の問題も多い。
「間違って生まれてしまった体を、やっと自分に取り戻せる」。「手術承認」の知らせに、手術を受ける30歳代の女性はほっとした表情を見せた。
身長165センチ。リーゼント風の髪形と口ひげ。ジーンズとサングラスが似合う筋肉質の外見は、男性そのものだ。現在は東北地方で建築の仕事に就いている。
女性の体に違和感を感じたのは2、3歳ごろのことだ。保育園で裸の男子の性器を見て「どうして自分にはないのか。きっとそのうち生えてくる」と思った。中学時代には、声変わりしない声がいやで、声帯を自ら金ぐしで傷つけた。高校生で初潮を見たときには、「自分は一体何者なんだ」とパニック状態になった。
高校卒業後、就職したものの、会社の制服のスカートがいやでやめた。以後は男性として、配管工や電気工事の仕事などを転々とした。「戸籍の性別がばれると困るから社会保険のない会社ばかり選んだ。今の社長もオレが女であることを知りません」。トイレや入浴は悩みの種だ。屋外での作業が多い仕事柄、トイレを我慢せざるを得ないことも多い。男子トイレではいつも個室に入るため、「腹をこわしているのか」と言われたこともある。
性転換手術を希望していることを知った母は「そんなばかげたことはやめてくれ」と猛反対した。3年間説得してやっと理解してもらった。「母も勉強してくれたようだ」と漏らす。手術が決まった今、夢見るのは結婚だ。過去には年上の女性と交際していたこともある。だが、これまでに性同一性障害で戸籍の訂正が法廷で認められたケースはない。戸籍上で「男性」にならなければ、女性との結婚は認められない。
1998/5/13
毎日新聞
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