経済的援助
性同一性障害に悩む多くの人は社会適応にさまざまな困難があるなどの理由により、必ずしも経済的に恵まれているとはいいがたい。そのために、十分な確認がないままに、治療を急ぎ、その結果、新たな困難を抱えることも国の内外の報告にみるところである。したがって、次の点に対する配慮が必要であり、日本精神神経学会としても、厚生省などの関係省庁に働きかける事を要望する。
(1)ガイドラインにそった診断と治療がおこなわれる場合には、それを医学的障害と認め、健康保険の対象疾患として認定するか、特定の医療機関に限って、たとえば、高度先進医療の対象疾患として認定するなどの方法により経費の軽減をはかることが望まれる。
(2)長期にわたるカウンセリングや相談が必要であるので、それに対する治療費も必要不可欠な治療として認定し、援助の対象とすべきである。
法的問題に関する指針を早急に出す事を望む
性同一性障害の治療に当たって、【母体保護法】第28条の「何人も、この法律の規定による場合の外、故なく、生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行なってはならない。」という条文との関係が問題とされる。 性同一性障害についてこれまでみてきたように、また、埼玉医科大学倫理委員会答申にあるように、性の転換の希望は単なる好き嫌いの問題ではなく、生物学的性(sex) と性の自己認知(gender)の不一致からくる障害であり、ある意味では人間存在の本質に関わる問題でもある。 従って、選ばれた医療グループにおいて、学問的論理に裏付けられた綿密にして、慎重な検討の上で選択された治療であれば、それは正当なものであり、「故なく」行なわれる単なる医療操作ではないとみなされる。特に、診断の過程において、中核的性同一性障害とその周辺群とを峻別し、その上で、性の転換によって生ずる可能性のある問題を吟味して行なうものであれば、個人の苦しみを軽減するだけでなく、個人の生活の質(QOL) を高めるための医療と考えられる。 ところで、性の転換にともない、性別や戸籍の変更など、さまざまな法的問題が生じることは当然のことである。このような法的問題が性同一性障害の治療効果を妨げ、生活の質を損なう事もすでに指摘されている通りである。したがって、法曹界はこれらの法的問題について早急に討議を開始し、適切な結論を出すことを要望するものである。 これらの問題が解決されてはじめて、医療の目的も達せられる事を認識したうえで、日本精神神経学会は法的問題の解決を法務省をはじめ関係省庁に要望すべきである。
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